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みやこのエコツーリズム

脇野沢ユースホステル

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ユースホステルは、施設レベルが4段階に分かれて、評価されています。脇野沢ユースは2つ星で、正直レベルは良くありません。でも私は、ユースホステルに多く宿泊していますが、脇野沢ユースは最も素晴らしいおもてなしを受け、生涯にわたって忘れることが出来ない記憶を持っています。そして、宿泊施設のエコ化、つまりエコなおもてなしについてのあるべき姿を、強烈に私に教えてくれたユースです。現マネージャーの磯山りょう子さんのご両親の代から、1965年に開設した歴史あるYHです。磯山りょう子さんのご主人は、下北半島の脇野沢をフィールドに、世界で最も北にすむニホンザルや特別天然記念物ニホンカモシカ、里山の風景など幅広く撮られるプロの写真家で、ユースのお仕事も手伝っておられます。

1、交通の便の悪さが自然の素晴らしさを護っている

脇野沢ユースに公共交通機関で行くのは至難の業です。私は青森から2往復しかないフェリーに乗りましたが、電車が遅れて、フェリーに無線で頼んでもらい、フェリーに10分待ってもらって、ようやく乗り込みました。客は私と漁師らしき数人だけでした。50分かかってようやく着いても、民家が寂しく数件あるだけで、山の迫った何もない小さな漁港でした。漁師さんに聞き聞き坂を上がって夕闇の迫った赤い屋根のユースにたどり着き、不安な気持ちで扉を開けました。

2、マネージャー 磯山りょう子さんの温かさと環境滞在へのアピールへの驚き

扉を開けるなり、「ああ!ようこそ“!今日はあなた到着できないかと思った。よかった。」とバンダナを頭に巻いて肝っ玉母さんみたいに一杯楽しくしゃべってくれて、寂しい気持ちが一遍に吹き飛んでしまいました。「この床の木ねえ、主人が少しずつ自分で吹き替えしているのよ。大工さんに頼んだって、忙しくなかなか来てくれないのよ。だから自前でやった方が早いの。きれいに磨いているから大切に歩いてね!」「トイレはね、手前のトイレだけ使ってね。女子は今日あなただけだから、いろんなトイレ使ったらお掃除大変でしょ。」「食事は6時からだからきっちり来てね。さめちゃうから」と矢継ぎ早に滞在マナーを伝授されて、びっくりしてしまいました。

3、トイレの美しさと輝きへの驚き

うわさの手前のトイレ、扉を開けて非常に驚きました「きれいに使ってくださいね」の大きな表示の脇に、今朝、庭で取ってきただろう一輪挿しのお花が優しく便器の横で、ゆれていました。トイレットロールに温かい手製のカバーがかけられていました。かがんでみて、びっくり。ご主人が張ったであろう、木の床板が磨きこまれ、自分の顔が写るくらい、あめ色に輝いていたのだ。木の板がこんなに輝くとは今まで知らず、用を足すのも忘れて、しゃがみながら、しばらく呆然と床板を眺め続けました。ご主人の愛情と、おそらく奥さんが毎日心をこめて磨いているその心が、この半坪にも満たないトイレから、一杯伝わってきて、温かい気持ちで胸が一杯になりました。トイレを掃除するということは、ここまで磨く、心をこめると言うことだと初めて理解しました。私は、用を足した後、トイレットペーパーできれいに周辺を磨き上げました。用を足したものは、必ずそうしなくてはいけないような思わせる力がそのトイレにはありました。

4、食事 

食事は、りょう子さんのお手製の料理、ホントにおいしかったです。食べ残しがないように言われたし、ご飯の量も聞かれました。

5、お風呂の究極のエコ

食事終了後お風呂の説明がありました。「お風呂は、男女兼用、私たちも入るの。だからきれいに使ってね。体洗って、体きれいにしてから湯船入ってね。湯船のふたは、全部開けたらさめやすいから、半分だけ空けてね。」と説明があった。私は、湯船に垢やゴミが浮かないように、細心の注意をして入りました。最近はどこのお風呂も、自動で追い炊きが出来、お湯も自動で蛇口からでてきます。でもそれは、多大なエネルギーを使っているということだと痛感させられました。

5、ご主人の脇野沢写真スライドショー

 お風呂の後、ご主人の、磯山隆幸さんからスライドで、脇野沢の魅力についてお話がありました。お茶とお菓子を頂きながら、磯山さんの朴訥とした温かい、自信と愛情に満ちた語り口に、すぐに引き込まれていきました。この寂しい何もない、ホント、店一軒見えないさびれた土地が、実は、ニホンザルの北限地で、ニホンカモシカの生息地で、豊かな動植物が人々と共存している。四季折々の美しい自然の山、海。そこに生きる動物、植物が涙がにじむほど美しい写真で綴られていて、心から感動してしまったのです。教えてもらわなければ、何も知らない、分からない、何もないと思いこんでいた脇野沢が、宝物が一杯詰った素晴らしい価値ある土地であることに劇的に気づいた瞬間でした。ここに観光客とその土地をつなぐインタープリター(通訳、ガイド)の重要性があります。伝える人、手段がなければ訪れた人には、その価値は真にわからないのです。

6、蛇口の節水

歯を磨こうとして、蛇口を見ると、「水道を出しっぱなしで歯を磨かないでね」と大きな表示があった。私は、コップに水を一杯注ぎ、それで、歯をきっちり磨いた。おそらく、この表示があれば水を出しっぱなしで歯を磨くことは、どの滞在者にも難しいはずだ。

7、環境へのまなざし

エコツーリズムとは一言も書いていないし、お話もありません。でも、りょう子さんは、無駄なおもてなしを省こうと、細かいほどホステラーに声かけをきっちりされるし、エコな表示も要所にきっちりされています。スライドを見て、脇野沢の魅力、それを護り伝えようとする、意気込みと実践。その力が、脇野沢の滞在で、環境に悪化をもたらす無駄なものを極力やめよう、そのために、ホステラーも協力する気持ちに必ずなります。それは、けちけちしたものではなく、ホステラーに豊かな心を育んでくれることを、私は身をもって実感しましたし、感動しました。滞在者が、「その土地の魅力に自らも参加して味わい護っている」という感覚は、何にも代えがたい高い旅の満足度につながるのではないかと感じました。

このような明確なコンセプトを持って、滞在者に伝えることのできる宿泊施設が、本来の役割であり、おもてなしであると考えるのです。

マネージャー 磯山隆幸・りょう子

〒039-5332 青森県むつ市脇野沢瀬野川目41

電話 0175-44-2341(FAX兼用)

アクセス

電車大湊線大湊駅(バス脇野沢行80分)脇野沢下車(徒歩10分〈400m〉)

脇野沢-蟹田間1日2〜3往復フェリー(所要1時間)

青森一脇野沢間1日2往復定期船(所要50分)

宿泊料金の表示変更について

 料金→会員宿泊料金:¥2990(税込み)

    一般宿泊料金:¥3990(税込み)

    朝食(和食):¥525(税込み)

    夕食(和食):¥945(税込み)

休館12月30日〜1月2日 定員30名(ベッド、和室)

ホームページでは、美しい写真と共に脇野沢の魅力、脇野沢を護る取組、りょう子さんの含蓄あるブログなどが掲載されています。

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