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みやこのエコツーリズム

星野リゾート

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1、代表取締役社長 星野佳路氏の卓越した経営力

経営戦略の中核に「骨太のエコ」を据え、それを前面に押し出しながら、拡大路線を突っ走っている旅館・ホテルとして、間違いなく、日本のトップである。この業績をたたき出したのが、若く、エネルギッシュ、知的な社長の星野佳路氏である。私は、星野氏が、世界のホテル経営を学ぶトップ養成機関であるアメリカコーネル大学ホテル経営大学院修士課程を修了していることに強く惹かれた。星野氏自身、アメリカで学んで、日本の旅館経営があまりにも遅れていることに驚いた、これでは、だめだと痛感したという。その後、自身が生まれ育った、1914年に開業した由緒ある、星野温泉旅館の跡取りとして戻る。アメリカで学んだ、最先端の経営を、星野温泉旅館に生かそうと奮闘した。でも、従来の従業員から激しい反発を受け、去らざるをえなくなる。星野氏もここで、つらい思いを多くされたと思う。そして経営悪化がピークに達し、星野旅館に呼び戻された。帰る条件が、自分のやり方に文句を言わないという約束だった。再び星野旅館に戻ってから、10年以上の歳月が流れ、今の姿がある。星野氏が大志を抱き日本に帰国してからだと、20年の歳月が流れていることになる。エコな旅館・ホテルとして形作るのに、20年くらいの粘り強い時間がいるということが言いたいのだ。

2、経営ビジョン

「環境対策に取り組み、顧客満足度を挙げることで、経常利益を上げていく」という初めからの一貫したビジョンを打ち立てている。私たちは、WG発足時からこの事を最重要戦略として言い続けている。しかし、京都でまねしようという旅館ホテルがでてこない。いくら勉強会を開いても、ほとんどが自分達とは関係ないという立場のままである。京都の観光資源は、間違いなく、京都の四季折々の豊かな自然と密接に影響しあいながら、発展してきた街の魅力である。この自然環境を守ることが、京都の街の魅力を守り、京都の観光資源の魅力を守ることになる。低環境負荷の運営をすることは、その地域の観光競争力を高める重要な戦略になるはずなのだ。それが、自分とは関係ない、行政がやればよい、他がやればよいという考え方はとても残念だ。

3、組織を動かす

ビジョンを掲げて、それをどうやって、従業員にやる気と楽しみを持って実行してもらうか。とても難しい。星野リゾートでは、数値を出して見せることで、克服しようとしている。顧客満足度では、直接インタビューやアンケートによって、お客様の満足度を定量評価し、数値化して従業員にリアルに見えるようにしている。環境目標も、グリーン購入ネットワークの「エコチャレンジホテル、旅館」の評価結果を数値化している。これは、チェックリスト形式になっていて、90項目近く細かに取組事項がならんでいる。これを、自主チェックするシステムになっている。現在300近いホテル旅館が登録しているが、多くが、チェックしておしまいという状態になっている。チェックしたものをどのように、環境経営に生かしていくのか、描ききれていない所がほとんどだ。ところが、星野リゾートは、このチャックリストの策定審議会議の最初からのメンバーであり、このチェックリストを前面的に経営指標に使用している。このチェックリストを使用し、弱い箇所、できていない箇所ははっきり分かるので、目標を設定しやすくなっている。そして、目標を設定したら、その達成に向けて、対策を検討し・実施する。その後、効果を測定する。測定された効果、課題に基づき、また目標を設定する。という典型的なマネジメントサイクルPDCAサイクルを採用している。これは、計画(plan)、実行(do)、評価(check)、改善(act)のプロセスを順に実施し、最後の改善を次の計画に結び付け、らせん状に品質の維持・向上や継続的な業務改善活動などを推進するマネジメント手法である。星野リゾートは、環境目標だけではなく、顧客満足度アップ、あらゆる経営に対しても同じサイクルを取っている。組織を部署ごとに責任を持たせ、そのセクションごとにPDCAサイクルを行い、それがボトムアップつまり末端の従業員からさまざまなアイディアを生み出し、実施できる体制になっている。旅館ホテル業界で、トップレベルの内容を誇る星野リゾートの環境報告書を、ウェブ上で過年度冊子を見てほしい。いかにボトムアップで、各担当部署に責任を持たせながら、PDCAサイクルを実行しているかが手に取るようにわかり、感動する。メーカーなどでは当たり前の事かもしれないが、これは、旅館ホテルにとって、画期的な事なのだ。ある程度の規模以上の旅館ホテルは、たいがい組織がヒエラルキーで、「俺の背中を見ろ」式の階層社会であり、下の地位にいるスタッフが、上に向かって、色々な改善策、アイディアを言い出せる、生かせる組織になっていない傾向が、メーカーなどの業種に比べても、非常に強いと感じる。おもてなしは目に見えない部分が多く、「だから先輩を必死に見て、先輩から盗み取る」という気風が強く、それはそれで大切な効果はあるだろう。でも情報化の時代を生きる年代の人たちは、ノウハウや技術を「必死に先輩を見て盗み取る」ことに慣れていないし、そのように教育もされてきていない。ノウハウや技術はインターネットや本、メディアなどから最新の情報がリアルタイムで入手でき、その最新情報からもヒントを得て、ノウハウや、技術を先輩達と話し合いながら、実践に生かす、評価し、改善するというスタイルの方がはるかに、彼らの身に合っていると思うのだ。「先輩の背中を黙って盗め」では、今の時代、組織、人が生き生きと動かないと思うのだ。末端のスタッフから、「新しいおもてなしの実践」が上に向かって発信できる、それを経営者は評価する、という組織作りが出来ていないと、今の時代、ホスピタリティ産業も生き抜いていけないと思う。

4、ピッキオ

エコツアーの実施、フィールドの自然調査保護活動を星野リゾートで行う目的で、星野氏が、旅館に再度戻られてから、少しずつ活動を広げてこられた。10年近くピッキオ自体は赤字続きで、でもここ4,5年業績が大きく伸び、2003年4月に株式会社ピッキオを設立し、有料のエコツアー、研修受け入れ、講師派遣など、「自然を活用する仕組みづくり」を推進し、利潤をも追求するため株式会社化し、星野リゾートから独立された。現在20数名のスタッフを抱えて、給料を支払えるまで、成長されている姿は、驚きであり、感動的である。多くのエコツアーの実施団体が採算が合わず苦しんでいる、あるいは、補助金や、自治体の運営に頼らざるを得ない中で、ここまでレベルアップされた力は本当に素晴らしいと思う。しかし、最初赤字続きの中で、粘り強く資金的に運営を支えてきた、星野氏の経営手腕を何よりも見逃すわけには行かない。

また2004年2月にNPO法人ピッキオを設立し、幅広い賛同者と寄付者を募りながら、野生動植物の調査や保護管理を実践しながら、地域生態系の「保全のための仕組みづくり」を推進し、目的別に、株式会社とNPO法人とに分けた戦略も素晴らしいと思う。

ピッキオがここまで成長した第一の要因は、専門性の高い人材を思い切って呼び、彼らに給料を出し、フィールドの調査を専門的に行ってきた事だと思っている。地域の一温泉旅館が、自前でこんな専門調査員を雇う発想を、他の誰が、決断しただろうか。常識的に考えればとんでもない話だ。それでも、星野氏は決断し、お金を投入し続けた。ピッキオのウェブを見ると、ピッキオがどれだけ、専門的なフィールド調査を行い、その学術的な評価が世界的に評価されているかが分かるだろう。そしてその専門性の高い学術調査の成果をエコツアーに生かしている。学術の成果をそのままお客さんに説明するのではもちろんない。「楽しさ」を第一目的にするエコツアーにそのまま学術成果を説明しても何の満足度もない。参加者がフィールドの空気をゆっくり吸い、自らフィールドから発見する、気づく事を大切にする。その気づきから、インタープリター(ガイド、通訳)はお客さんのニーズを察し、コミュニケーションし、より深い気づきへ意識を共有していく。そのコミュニケーションの中で、学術調査の成果が、分かりやすい、ビジュアルで、楽しいコンテンツへ、インタープリターの力量によってアレンジされてお客さんに伝わる。毎日同じ時刻に同じ事を観察し記録する、それを何年間も続ける。そんな地道な調査から初めて見えてくる、自然の神秘、魅力、感動が根底にあるからこそ、インタープリターのお客さんへのアレンジは、レベルの高い、説得力のあるものになる。つまり、ピッキオしか知らないフィールドの事実があり、ピッキオのエコツアーに参加しないと、その感動的で、貴重な話が聞けないという、高いブランド力を構築できたことになった。結果エコツアーの質が高くなり、多くの参加者を集める事につながった。深い学術調査とエコツアーが不可分のものとして捉えた事に、ピッキオの成功の最大の事由があると考えている。

NPO法人を設立した事で、星野リゾートだけではなく、その地域全体、住民にも積極的に働きかけ、保全の仕組みに巻きこもうとする活動も軌道にのってきた。

5、スタッフの熱い気概

つぶれかけの温泉旅館を、エコホテルにし、フィールドでエコツーリズムを実践し、更に地域全体に働きかけていこう、動かしていこう、更に、日本のあちらこちらの地域(現在5箇所)でそのノウハウを実践し、エコリゾートを増やそう、地域を活性化し、保全しようという星野氏の壮大で熱い気概が、スタッフにも共有され、組織として動いている。このような気概とビジョンを、全国多くのホスピタリティ産業のオーナーに持っていただければと心から願う。

6、星のや軽井沢

今現在星野リゾートグループとして、本拠地の長野以外全国5箇所のホテル、旅館の運営を行っています。いずれも、赤字で倒産した所を再生させるべく引き受けたわけです。最初の再生ホテルは現在5年目なので、再生事業自体新しい意とりくみではあります。今の所、計画通り、再生は進んでいます。この星野リゾートの運営手法が全国で通じるということだと思います。

本拠地の「星のや軽井沢」ですが、昨年夏に前面新規建て替えで、環境にもこれ以上考えられないというくらいこだわって、オープンしました。全てスイートルーム仕様で、ピーク時一人、朝食のみで一泊3万円以上の最上級価格帯にも関わらず、予約でぎっしり埋まっています。

正直これだけの単価をお客様が毎日支払ってくれれば、ものすごい収益です。多くのホテル旅館が、単価を低く抑えて売らざる得ない厳しい状況の中で、この鼻息の荒さ、自信、実績はすごいと思うのです。それで、エコロジーを前面に打ち出しての価格です。他のホテル旅館も是非このような視点を取り入れていただきたい、今までの宿泊事情の世界ががらりと変わると確信しています。

以下、星野氏の考え方

7、経営効率を高める

旅館を見ると、家族的な経営が主体で、効率的な経営の仕組みやサービス提供の仕組みが出来ていません。例えば、スタッフが固定的に配置されているので、一人一人の手持ち時間が大変長い。チェックインを担当するスタッフが、食事の用意からお見送りまでできるようにすれば、生産性を上げることができる。また、平日と休日の大きな稼働率の差を考え、外部で集中的に食事を作り、旅館に配送するなどという工夫も効率を上げる手段となる。顧客情報をデータベース化し、経験や勘に頼るのではなく、社員の声なども含めたあらゆる情報を集め、誰に対して、どんなサービスをするのか、ターゲット・コンセプトを明確にしながら、戦略的に事業を進める「科学的経営」も必要です。

8、お客様の立場に立った行動

自分達売り手の都合ではなく、お客様の立場に立った行動考えが必要です。どうして、朝は9時までに食べないといけないのか、夜は何時と何時と2部制であるとか、海外では、24時間ルームサービスが当たり前。いろんなサービスが選択性です。スタッフ一人一人が、自分で経営判断出来るように、情報の全てをオープンに共有するようにし、お客様と接した時に、自由に自らの責任で、瞬時に、行動を判断できるようにする。そして、お客様の喜びの声、お褒めの声を直接いただけるように行動でき、スタッフのやりがいも増す。組織もだから、ピラミッドではなく、フラットにする。

9、壁を破る大変さ

これらのことに気づいている人は多いけれど、今までの考え方を変えるには大きなエネルギーが必要です。海外の観光地と競争しているのだという意識を持ち、自分達を変えていかなければ、これから成長は望めません。

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