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みやこのエコツーリズム

つっちゃんと優子の牧場の部屋

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1、日本で初めてのファームステイ

30年前、奥様は、東京からご主人が営む牧場の手伝いをされたことを縁に、ご結婚。ヨーロッパで人気のあった、ファームステイにご興味を持たれ、日本で初めて、本格的なファームステイを北海道新得町で始められた先駆者であられる。ヨーロッパへの視察旅行にも行かれ、地域交流牧場全国連絡会の立ち上げをもリードされる。さらにスローフード協会の立ち上げをリードや、北海道庁のさまざまな委員会の委員として、積極的に提言、パートナーシップ活動も続けられている。その活動の幅の広さと積極性に、頭が下がってしまった。エコツーリズムという言葉は使っていないけれど、エコツーリズムの考え方そのものを求めておられたし、実現されていた。その功績の高さと裏腹に、牧場はゆったり時間が流れていた。

2、ファームステイとは何か

ファームステイとはどんなものか。ヨーロッパをつぶさに視察され、勉強を深く重ねられ、「日本」の更に「新得」という地域にふさわしい、ファームステイとは何か。それを10年の積み重ねの中で、誠実に真摯に実践してこられた過程として、素晴らしい、ファームステイのモデルともいえる、滞在環境を創られていた。私自身も、ファームステイとは何かということが心から良く分かった。

まず、駅に迎えに来てもらう所から、驚いた。全く知らない方なのにすぐわかった。使い込まれた長靴と作業服、日焼けしたおじさんの姿でお出迎えだった。車も、いかにも牧場でタフに使用されているという感じである。ホテルや旅館では考えられないお迎えであろう。おじさんと車に乗り込んだ瞬間、私はお客さんではなく、牧場の仲間という意識になってしまった。着いた所は、一面牧草地の中で、隣の家は、はるかかなたを見渡しても一軒しか見えない。牛や、ヤギや馬、犬のお出迎えを受けて、動物達の迫力に圧倒されてしまった。2階建ての小さなロッジ風の一軒家で、ご家族の住居である。その同じ住まいの片隅に宿泊者用のドアと入り口と部屋がついていた。部屋は広く、キッチンダイニング、ベッドルーム、バストイレがついていて、ゆったり使えるし、とてもきれいに清掃されていた。

いたるところにお客さんから頂いたという、置物やぬいぐるみなどの調度品が飾られていた。小さな書架には、スローフード、グリーンツーリズム、ファームステイ、環境保護などの本が置かれていた。奥様が求められたり、滞在者が置いていった本である。宿泊者は、この牧場内で、何をしても、何をしなくてもよい。牛舎で、牛の世話に精を出してもいいし、眺めているだけでもいい。畑仕事をしてもいいし、本を読んでもいいし、犬やヤギや、馬と遊んでもいい。ボーっと風景の中に佇んでいてもいい。それでも、牛舎の仕事は、生き物相手で、ご主人と息子さんの仕事は、重労働で、朝5時から9時半。夕方4時半から8時ごろまで牛舎から離れられない。そのサイクルが、牧場の機軸であり、ファームステイの滞在者にも大きく影響される。だから夕食は7時半ころからである。奥さんと、スタッフの女性と共に夕飯を食べ始めて、少し遅れて、ご主人と息子さんが席に着かれる。一つの同じ食卓で、大皿に盛られた、お料理を取り分けながら、家族の一員として、お食事を頂く。民宿ともユースホステルとも違う、不思議な感覚である。食器の多くが、滞在者の方からのプレゼントである。会ったことのない滞在者と、食器、本、調度品を通じて、交流している不思議な気持ちになった。食事も、すごかった。スローフードそのもので、自らの畑の無農薬で栽培している野菜を中心にした食材、飼っている鳥の卵、牛の牛乳、手作りのパン、ジャムがふんだん使用され、薄味、添加物全くなしのお料理である。バラエティーに富んだメニュー構成で、7泊しても一度も同じ料理がなかった。ここまで徹底したスローフードのお料理を頂いて、自分の体が非常に健康になるのが、感触としてすごくわかった。

私の方は、最初このアットホームな家族の一員となった自分に驚くのだが、湯浅ご家族は、もう慣れっこである。逆に滞在者がいないと、寂しい食卓に感じてしまうそうだ。湯浅さんのご家庭の考え方、生き方の生身に触れることになる。湯浅さんご夫妻は、身内と話すように何でも話されるし、心に隠すことはなく、そのままの思いで話される。こちらも、知らないうちに、いいことも悪いことも何でも話してしまっていた。初対面の方とのお付き合いの仕方いう社会的な慣習事例は、もろとも崩れてしまった。

奥様の湯浅優子さんは、とにかく知識が豊富で、あらゆることに精通されておられて、驚いてしまった。新得の町、北海道、日本、世界、それぞれがおかれている状況を正確に把握されて、そこから、何をしていけばいいのかを常に、模索され、できる範囲で無理なく、果敢にチャレンジされているように感じた。どんなエコツーリズム的な質問しても、泉が流れるように話が次々と展開されていく。どれもが具体的で的確である。

ファームステイは、家族の一員として、今まで知らなかった生活の知恵、考え方、生き方を学ぶ、体験する場としての役割は非常に大きかった。だから受け入れるファーム(農場、牧場)が、どのようなコンセプトで、今までファームを創り上げてきたかというプロセスが非常に大きく、滞在環境に影響する。つまり、その経営者の心意気である。その心意気直に触れるのがファームステイであり、お互いの共感が基本スタンスである。10年間で延べ3000人の方を受け入れ、その一人ひとりの姿を思い出せるとおっしゃる奥様の暖かい心意気に感激してしまった。

こちらのファームステイは間違いなく、高いレベルに到達されている。

3、新得町立レディースファームスクール

実は、ここの女性のスタッフは、新得町が運営している、新得町立レディースファームスクールで1年間の研修を受けて、さらに、2年間、この牧場でスタッフとして働いている、京都市山科区在住の方である。今年度11年目を迎えているスクールの果たす役割はものすごく大きい。独身女性に限定することで、その女性が、新得の町に残って、農業や酪農の担い手となり、その地域の男性と結婚する。人口の増加にもつながるし、地域活性化につながる。仮に、新得に残らなくても、彼女達は間違いなく、新得のファンになり、その経験を別の場所で生かしていく。住居費や食費、教材費はかかるが、逆に手当てが一日3000円もらえるので、実質は無料である。事実、この牧場の息子さんは、このレディースファームスクール出身の女性と結婚し、お子さんも先日誕生している。

4、新得ファームホリデー 

新得農村ホリデー研究会という新得町がサポートしている研究会があり、新得で農業体験、酪農体験などができる施設の連絡会のようなものである。そういった、横のつながりも大切にしながら、各々の施設が個性的に運営している。共同マップを出したり、気軽に、滞在者に研究会のメンバーを紹介しあったりしている姿が印象的であった。お互いライバルではなく、共に育っていこうという意識がとても強いことに驚いた。日本で4番目に広い、雄大な新得の風景がそんな気持ちにさせるのではないかと思った。

牛舎

牧場である以上、牧場の運営が機軸であり、あくまでも、ファームステイは、従である。ここの牛は、真冬でも、一日2回の搾乳以外は、外の牧草地で過ごす。冬だと雪に覆われ、マイナス20度にもなる。それでも、元気なのである。お産を控えた牛は、常に、動き回れるように牛舎を整えて移す。鎖につながれたままだと、お産が格段にしんどくなるらしい。やはり、ストレスをためない生活が動物にもとても大切ということだ。

北海道新得町上佐幌西1線87番地

電話 (01566)5-3548