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みやこのエコツーリズム

然別湖ネイチャーセンター

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1、日本で最初の私設ネイチャーセンター

それでも、昭和の終わりごろの開業であるから、まだ18年程なのに驚いた。ネイチャーセンター、つまり、観光客に対して、仕事として、自然を紹介するガイド業は、日本においては歴史が非常に浅いのだ。もともと然別湖の東隣にある東雲湖(しののめこ)へホテルのお客様をご案内する仕事を開始した時が始まりである。その後、1990年秋に『有限会社然別湖ネイチャーセンター』として法人化した。多くの観光で訪れたお客や修学旅行生に支えられ、業務を展開してきた。社名を更に2003年に『株式会社北海道ネイチャーセンター』に変更し、登別の営業所を追加して2地点でのガイド業務を拡大されている。現在14名、然別湖に8名常勤でつめている、大所帯である。年間延べ3万人受け入れている。国内で体験学習を日本で初めて受け入れ、修学旅行生を10年間で、延べ18万人を受け入れている。大変な実績である。これだけの観光客を呼び込むには、関係セクターと密接な関係、持ちつ持たれつの関係が必要である。それが「マスツーリズム」になってしまうのではないか、という危惧もあるが、しかし、このくらいの集客をしなければ、常勤のスタッフを雇用し、インタープリターという業界を盛り立て、自立していくことはできないのだ。

2、ホテル、エージェント、関係団体との密接な関係

①ホテルとの関係

然別湖には、「風水」と「福原」という2つの温泉旅館ホテルが、比較的大規模に隣接して建っている。その間に然別湖ネイチャーセンターの事務所がある。木造平屋の6畳ほどの小さなハウスであるその事務所は、然別湖観光案内所、拓殖バス営業所の看板も掛かっていた。ネイチャーセンターのスタッフがその仕事を兼務していた。また、ホテルの滞在者はネイチャーセンターで申し込んでも、ホテルのフロントで申し込んでも、自動的にホテルとネイチャーセンターのパソコン双方に申し込み状況が送られ同時に確認出来るようになっていた。会計もホテルでまとめて支払うようになっていた。当然ホテルは仲介手数料を受け取っている関係となっている。

②エージェント、町行政との関わり

冬は、「然別湖コタン」という行事が25年間毎年行われている。氷に雪に厚く覆われた然別湖に、氷で出来た家をいくつも大小建てるのだ。氷で出来た、宮殿には、夜は内部がライトアップされ、素敵な氷のバーができ、氷で作ったグラスにお酒を注文して入れて飲む。氷のスクリーンで、然別湖の自然のシアターが流れている。宮殿内部は非常に幻想的である。氷でできたイグルーもいくつもでき、そこに氷のベッドがあり、有料で宿泊することができる。これは全部、然別湖ネイチャーセンターの委託事業である。ボランティアも大勢募り、11月頃から2ヶ月掛かって完全な手作業で完成させる。湖への降り口に大きな看板で、JALツアーズ、ANAスカイホリデーと2枚の看板が掛かっていた。2社の協賛なのである。鹿追町も全面に協力している。鹿追町の然別湖周辺の管理清掃業務、自然観察の委託業務、「日本旅行の100年の森」の企画、運営、政府のビジットキャンペーンの委託、など、多方面の委託業務も行っている。

冬場の集客が極端に減る北海道にあって、本州からやってきた、ツアー客がたくさんホテルに滞在し、好奇心一杯の目で「然別湖コタン」を見学し、マイナス20度の夜にも、周りが氷でできた、天然露天風呂に入り、氷のイグルーで寝て、氷の宮殿で楽しそうにはしゃぎながら、カメラのシャッターを夢中で押し、感激の面持ちで氷のグラスを傾ける。そして、この集客のお陰で、ネイチャーセンターのガイドは、減ってしまう冬のガイドの仕事を、このコタンの運営に振り向けられるのだ。そしてその集客は、旅行代理店でほとんど占められている。

3、冬のプログラム

スノーシューを履いての早朝散歩、ナイトウォッチング(1時間1800円)、森の散歩(1時間半2500円)クロスカントリースキーで、然別湖を横断する(1時間半2600円)東雲湖まで行くコース(3時間)氷のグラス作り(1時間、1500円)大人も子どもも、早朝散歩、ナイトウォッチングを除いて、同額である。インタープリターの能力はやはり高く、ここの山や自然の生態系に非常に詳しく、何を聞いても、専門的に明確に答えてくれる。だから、参加者は、疑問点を明確に解消してくれるガイドの知識量に高い満足を得ると感じた。でも、私、それプラス、エンターテイメント的な要素をプログラムの中に入れたらどうだろうかと思った。「自然観察」という学習という側面がイメージされるので、エンターテイメント的な要素は軽視されがちである。でも、浮き浮き、ワクワク、心が躍動するような仕掛けは、結果的に、参加者の関心度と集中度を高め、プログラムを、結果的により深く学べるのではないかと思うのだ。散策中、ゲームと取り入れたり、小道具を魅惑的に持ち出して、実験してみたり、解説を参加者に加えるという感覚ではなく、参加者がワクワクするような引き出し方、物語性を持たせたトークなど解説技術の工夫には余地があるのではないだろうか。

また、冬以外はこれに、カヌー、キャンプ、野外料理、山登り、エアトリップなどが加わるので、より多彩感が出てくる。エアトリップは、新しい独自の自然観察形態で、ワイヤーケーブルに体をぶら下げて、ケーブルに沿って、山えお滑降しながら、森の生物、生き物の魅力に触れるツアーだ。このような、オリジナリティーを観察形態は、集客につながる。

4、北海道アウトドアガイド資格制度

鳴り物入りで、平成13年にアウトドア資格制度がスタートし、平成14年 「筆記試験」と「実技試験」が実施された。試験分野は [ラフティング・カヌー・山岳・自然・乗馬] の5部門でそれぞれの合格者には[北海道アウトドアガイド」の資格が与えられる。これで、4回試験を行い、合格者を送り出している。初めは手探り状態だった団体が、驚くことに、北海道のアウトドアに関わっている団体のほとんどはこの資格制度を利用し、信用ブランドとして、組織の前面に掲げている。非常に成功している事例である。資格制度を創設するにあたって、まさに、関係者のテーブルを北海道庁が粘り強く設定し、議論を尽くし、海外の先進事例、国内の先進事例を詳細に検討し、皆の合意を持って、生み出したプロセスは高く評価される。またそれ以上に、アウトドアでしか、北海道の観光産業は生き残れないという危機感、そのために質を高めないといけないという意識の共有が、関係者に強くあったということが、この事業の成功への最大の要因であった。京都市内でこの制度を創設したいという思いを、私たちの活動の初めから持っているが、この危機感の共有が、関係者の中で持てない限り実現は、難しいと思われた。もちろん、ネイチャーセンターでも、信用ブランドとして、資格取得者が広報に書かれている。

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